やってみよう!なぜなに研究プロジェクト

ビス校プレゼンツ

野口 聡一先生 インタビュー

宇宙飛行士、博士(学術)
東京大学特任教授、立命館大学学長補佐
合同会社未来圏 代表

のぐち・そういち野口 聡一先生

1996年宇宙飛行士に選抜。3度にわたる宇宙飛行のなかで日本人初の快挙を多数成し遂げ、2021年には「世界で初めて3種類の違う帰還(滑走路、地面、海面)を達成した宇宙飛行士」としてギネス世界記録に認定。翌年のJAXA退職後も「宇宙で暮らすことが人間の内面にもたらす変化」について研究を続けている。

思い出にのこっている自由研究じゆうけんきゅうはあります
か?

3年生か4年生のときにやった「自分たちのんでいるまちを知ろう」という研究けんきゅうです。

当時、地図に興味きょうみがあったので「自分たちのんでいるまちを知ろう」というテーマで、紙粘土かみねんど水彩すいさい使つかって立体地図を作りました。まちの中にどんな施設しせつがあるのか、それらが地図記号きごうでどうあらわされているか、どんなふうに配置はいちされているかといったことを知る、よい機会きかいになりました。

普段ふだん研究けんきゅうしたいテーマはどうやってめて、どうやってすすめていますか?

自分がやりたいことと、()の中に必要(ひつよう)なことのつながりを見つけて研究(けんきゅう)します。

(ぼく)の場合は、今の宇宙(うちゅう)のいろいろな技術(ぎじゅつ)を知った上で、それが()の中にどう(やく)に立つかを考えます。(ぎゃく)に、地球(ちきゅう)の天気・気温(きおん)()わってきたことで()こる問題(もんだい)自然(しぜん)環境(かんきょう)保護(ほご)など、()の中にある課題(かだい)に対して「もしかすると宇宙(うちゅう)のこういう技術(ぎじゅつ)(やく)に立つんじゃないか」と考えて研究(けんきゅう)することもあります。そういうふうに、自分がやりたいことと、()の中に必要(ひつよう)なことのつながりを見つけていくというのが、研究(けんきゅう)のひとつのやりかたですね。

野口先生が滞在(たいざい)した国際宇宙(こくさいうちゅう)ステーション(2010年)© JAXA/NASA

宇宙うちゅうについての研究けんきゅうは、わたしたちの生活にどんなふうにつながっていますか?

(じつ)は、宇宙(うちゅう)についてのいろいろな研究成果(けんきゅうせいか)が地上の生活に役立(やくだ)てられています。

(ぼく)たち宇宙(うちゅう)関係者(かんけいしゃ)の間ではよく「宇宙(うちゅう)についての研究(けんきゅう)には『宇宙人(うちゅうじん)研究(けんきゅう)』と『地球人(ちきゅうじん)研究(けんきゅう)』の2種類(しゅるい)がある」といいます。いいかえると「地球(ちきゅう)から宇宙船(うちゅうせん)などを使(つか)って宇宙(うちゅう)に出ていく人類(じんるい)のための研究(けんきゅう)」と、「地球(ちきゅう)()んでいる人類(じんるい)のための研究(けんきゅう)」のことです。(じつ)は、宇宙(うちゅう)についての研究(けんきゅう)のほとんどは、地上の生活に役立(やくだ)てられる「地球人(ちきゅうじん)研究(けんきゅう)」だといえるんです。たとえばカーナビや地図アプリに使(つか)われているGPS。もともと飛行機(ひこうき)などの位置(いち)特定(とくてい)するために開発された人工衛星(じんこうえいせい)技術(ぎじゅつ)ですが、今や駅前(えきまえ)で友だちと()ち合わせるときにもなくてはなりません。気象(きしょう)衛星(えいせい)画像(がぞう)も天気をくわしく予測(よそく)するために使(つか)われていますよね。こんなふうに、宇宙(うちゅう)研究(けんきゅう)成果(せいか)は毎日の生活につながっているんですよ。

カーナビは、専用(せんよう)人工衛星(じんこうえいせい)から発信(はっしん)された信号(しんごう)使(つか)って、車の現在(げんざい)位置(いち)特定(とくてい)している

研究(けんきゅう)をしていて、いちばん楽しい・面白(おもしろ)瞬間(しゅんかん)はいつですか?

仲間(なかま)(ほか)研究者(けんきゅうしゃ)と話し合って、考えが(ふか)まったときです。

研究(けんきゅう)というとなんとなく一人でコツコツ()り組んでいるイメージがあると思いますが、(ぼく)が楽しいと(かん)じるのは、一緒(いっしょ)研究(けんきゅう)をしている仲間(なかま)(ほか)研究者(けんきゅうしゃ)との議論(ぎろん)を通じて研究(けんきゅう)に新しい展開(てんかい)が見えたときです。完全(かんぜん)に一人だけで研究(けんきゅう)をしていては面白(おもしろ)くない。同じような興味(きょうみ)()つ人たちと議論(ぎろん)をして、考えを(ふか)める瞬間(しゅんかん)面白(おもしろ)いですね。

野口先生は宇宙(うちゅう)にビスコを()れて行ってくれていましたね。宇宙(うちゅう)で食べたビスコの(あじ)はどうでしたか?

(あじ)(かん)じにくくなる宇宙(うちゅう)でも、地上で食べるのと()わらない、なつかしい(あじ)わいでした。

ビスコは子どものころから食べていたのですが、宇宙(うちゅう)でも地上で食べたそのままのなつかしい(あじ)がして、気分転換(きぶんてんかん)にとてもよかったです。宇宙空間(うちゅうくうかん)では重力(じゅうりょく)関係(かんけい)でからだの水分のバランスが()わって、顔がむくんでいるような状態(じょうたい)になるため、(はな)がつまって(あじ)感覚(かんかく)はにぶくなるものなのですが、ビスコは食感(しょっかん)甘味(あまみ)がポイントなためか、地上と()わらない(あじ)わいに(かん)じました。そういった意味(いみ)で、ビスコは宇宙(うちゅう)向きの食べものかもしれませんね。

2010年に野口さんが国際(こくさい)宇宙(うちゅう)ステーション(ISS)に()ちこんだビスコ保存(ほぞん)(かん)写真(しゃしん)現在(げんざい)のパッケージ)

未来(みらい)に向けて、野口先生がいま注目(ちゅうもく)している研究(けんきゅう)分野はなんですか?

地球(ちきゅう)でも宇宙(うちゅう)でも、その場所(ばしょ)ごとに(かぎ)りある資源(しげん)大事(だいじ)使(つか)研究(けんきゅう)注目(ちゅうもく)しています。

いま地球(ちきゅう)上では「持続(じぞく)可能(かのう)な社会づくり」が注目(ちゅうもく)されていますが、これは宇宙(うちゅう)でも大事(だいじ)なテーマなんです。たとえば「使(つか)()てではない月面(げつめん)探査(たんさ)」。ロケットの(さい)利用(りよう)や、月面(げつめん)にある水分の活用などは、大事(だいじ)研究(けんきゅう)分野になってきていると思います。宇宙(うちゅう)では地球(ちきゅう)(ちが)って、太陽光(たいようこう)発電(はつでん)(やす)安定(あんてい)して電気がつくれる一方、水はとても貴重(きちょう)です。地球(ちきゅう)から水を()っていくばかりでは「持続(じぞく)可能(かのう)」とはいえない。だから、電気をたくさん使(つか)い、水を()かしてきれいにするんですね。そうやって場所(ばしょ)ごとに豊富(ほうふ)資源(しげん)使(つか)いながら、(かぎ)りある資源(しげん)大事(だいじ)にしていく研究(けんきゅう)注目(ちゅうもく)しています。

将来(しょうらい)月面(げつめん)基地(きち)イメージ図(2019年)© JAXA

自由(じゆう)研究(けんきゅう)研究(けんきゅう)したいことがわからないときはどうしたらいいですか?

科学館(かがくかん)などに行ってみて、少しの(りょう)でよいので自由(じゆう)研究(けんきゅう)をいちど仕上(しあ)げてみることをおすすめします。

今は情報(じょうほう)がいっぱいあるだけに「自由(じゆう)研究(けんきゅう)といわれても何をすればいいかわからない」と悩んでしまいますよね。おすすめは、夏休みの早い時期(じき)に少しの分量(ぶんりょう)でよいのでいちど自由(じゆう)研究(けんきゅう)仕上(しあ)げてしまうことです。科学館(かがくかん)などに足を(はこ)んでみて「一週間の天気を記録(きろく)しよう」などもよいですし、もちろん(ぼく)の地図づくりのように理科以外(いがい)のテーマも大いにありですね。いずれにしても、あまり(こころざし)を高く持ちすぎず短期(たんき)決戦(けっせん)でやりきるのがおすすめ。実際(じっさい)にやってみると、もっと知りたいことが出てくるかもしれませんよ。

自由(じゆう)研究(けんきゅう)()り組む子どもたちにメッセージをお(ねが)いします

自分の知りたいこと、やりたいことを大事(だいじ)に。

普段(ふだん)の学校の勉強(べんきょう)(ちが)って、夏休みの自由(じゆう)研究(けんきゅう)は時間に(しば)られず自分がやりたいことに()り組めるいいチャンスだと思います。自分の知りたい・やりたいことをまずは大事(だいじ)に。先生や親御(おやご)さんなど大人の意見(いけん)も聞きながら、「研究(けんきゅう)をすることが自分たちの生活にどうつながるのか」を考えるとよりよい研究(けんきゅう)になると思うので頑張(がんば)ってください。

©合同会社未来圏

藤原 麻里菜先生 インタビュー

コンテンツクリエイター、文筆家
株式会社無駄 代表取締役社長

ふじわら・まりな藤原麻里菜先生

頭の中に浮かんだ不必要な物をなんとか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心に作品を発表。2022年にはあらゆる分野において傑出した若者を表彰するTOYP(青年版国民栄誉賞)で「会頭特別賞」を受賞。台湾での個展には25000人以上が来場するなど、その自由な発想が国内外で高く評価されている。

藤原先生の自由研究 ビスコをつかった無駄発明

  • どんな研究?

    ビスコを使(つか)って、(かなら)ずしも必要(ひつよう)ではないけれど、あったら楽しい発明(はつめい)(ひん)をつくる。

  • この研究テーマを選んだ理由

    ビスコのクリームだけを食べたいときに、スプーンだと上手にけずれなかったから。

研究成果

3Dプリンターをつかって、ビスコのクリームだけを食べられる専用カトラリーを発明!

針金(はりがね)使(つか)ってつくるパターンも考えましたが、衛生面(えいせいめん)を考えて3Dプリンターにしました。クリームが一番いい(けず)られ方になるように、(けず)るところの角度(かくど)工夫(くふう)しています。実際(じっさい)にクリームだけを食べてみると、酸味(さんみ)が強く(かん)じられました。

使った道具
  • パソコン
  • 3Dモデリングソフト(Fusion)
  • 3Dプリンター

研究のステップ

1

ビスコを食べながら、疑問(ぎもん)や思ったことをもとにアイディアを出す

ポイント
  • サンドイッチ(じょう)の形や、食べたときにポロポロと(くず)れるビスケット部分(ぶぶん)など、ビスコの特徴(とくちょう)をヒントに「クリームだけ食べてみたい」「食べこぼしを(ふせ)ぎたい」と考えたよ
ポイント
  • サンドイッチ(じょう)の形や、食べたときにポロポロと(くず)れるビスケット部分(ぶぶん)など、ビスコの特徴(とくちょう)をヒントに「クリームだけ食べてみたい」「食べこぼしを(ふせ)ぎたい」と考えたよ
2

アイディアをひとつに(しぼ)って、材料(ざいりょう)や作り方を考える

ポイント
  • 発明(はつめい)のアイディアを(えら)ぶときは「使(つか)ったときに(おどろ)きがあるか」を大事(だいじ)にしよう
  • 普段(ふだん)からアイディアのタネを記録(きろく)しておくと便利(べんり)だよ
3

パソコンの3Dモデリングソフトで3Dの設計(せっけい)図をつくる

4

3Dプリンターで出力する

5

実際(じっさい)使(つか)ってみて、使(つか)心地(ごこち)確認(かくにん)する

ポイント
  • 使(つか)ってみた感想(かんそう)もしっかりと記録(きろく)しておこう
ポイント
  • 使(つか)ってみた感想(かんそう)もしっかりと記録(きろく)しておこう
発展のヒントひとつのものの特徴を観察して、それをつかった発明の手順を知ることができたね。みんなも身近な材料をつかって、うかんできたアイディアを形にしてみよう。

藤原ふじわらさんは、無駄発明むだはつめいのテーマをどのようにめていますか?

生活の中で()かんだ疑問(ぎもん)をもとに発明(はつめい)をします。

まずは普段(ふだん)の生活のなかで疑問(ぎもん)()つところからはじめます。「これを作ったらどうなるんだろう」というような疑問(ぎもん)をもとに、発明(はつめい)をすることが多いです。生活のなかで、電車を()っているときや(ほか)の人とふれあうときなどの「社会にふれるとき」、つまり、自分と社会の間に(かか)わりが生まれるときに「あっ、今ちょっとモヤモヤしたな」と(かん)じる瞬間(しゅんかん)があります。そんなときに疑問(ぎもん)()かんできやすいですね。

どのように疑問(ぎもん)から発明(はつめい)のアイディアを生み出しますか?

()かんできた疑問(ぎもん)にこたえるアイディアを、いろいろな視点(してん)から考えてみます。

たとえば「()(こと)()わらないときどうすればいいか」という疑問(ぎもん)がわいたとすれば、①仕事(しごと)()わらせる発明(はつめい)()(こと)()わらなくても気持ちよく()ごせる発明(はつめい)仕事(しごと)気持(きも)ちよく()わらせる発明(はつめい)、というように、いろいろと視点(してん)()えてアイディアを考えます。ひとつの疑問(ぎもん)から少なくとも3つはアイディアを出すようにしていますよ。

発明(はつめい)のアイディアが形になるまでのステップはどのようなものですか?

(だれ)(きず)つかないか・(だれ)もやったことがないかをチェックしてから作品(さくひん)をつくります。

まずは、アイディアを形にして(きず)つく人がいないか考えます。大丈夫(だいじょうぶ)そうであれば、(つぎ)にまだ(だれ)もやったことがないものかどうかを調(しら)べます。そして最後(さいご)に、設計図(せっけいず)材料(ざいりょう)を考えはじめ、実際(じっさい)に形にします。

発明(はつめい)をしていて一番楽しい、面白(おもしろ)瞬間(しゅんかん)はいつですか?

やっぱり発明(はつめい)のアイディアを思いついたときが一番面白(おもしろ)いです。

どのステップも楽しいですが、アイディアが()かんできて「自分が生み出さないと、このアイディアが()の中に出ないんだな」と思うと、つくりたいという気持(きも)ちがわいてきます。

なかなか発明(はつめい)のアイディアが()かばないことってありますか?

もちろんあります。そんなときは考えるテーマをせまくしてみるといいかもしれません。

とくに自由(じゆう)研究(けんきゅう)(すべ)てが自由(じゆう)なので、みなさんも(なや)むかもしれませんが、そんなときには自分でテーマをせまくしてみるのもいいと思います。たとえば目の前にある本のことについて考えるだけでも「しおりってなんだろう」「本ってどうやってできているんだろう」というふうに、いろんな疑問(ぎもん)がわいてきますよね。

()きなことが見つからないときはどうしたらいいですか?

やっていると気持(きも)ちがラクになるものや、挑戦(ちょうせん)したいものを(さが)してみてください。

(だれ)かとおしゃべりして(わら)ったり、上手でなくても料理(りょうり)をつくってみたり、そんな「()きというほどでもないけど、やっていると気持(きも)ちがラクになるもの」や「いつもの生活から一歩()み出して挑戦(ちょうせん)してみたいもの」を(さが)してみてください。いっけん無駄(むだ)なこともいいからやっていくと、それがいつか()きなことになったり、毎日が(ゆた)かになる気がします。

自由(じゆう)研究(けんきゅう)()り組む子どもたちにメッセージをお(ねが)いします

子どものときに研究(けんきゅう)したことは、大人になってからも自分を(たす)けてくれます。

自由(じゆう)研究(けんきゅう)は文字通り「自由(じゆう)研究(けんきゅう)」なので、あまり先生やクラスメイトのことは気にせずに、自分の興味(きょうみ)がある方向(ほうこう)()(すす)んでください。自由(じゆう)研究(けんきゅう)なんて無駄(むだ)だと思う人もいるかもしれませんが、大人になった今では、映画(えいが)・ゲーム・本・まんがなど、子どものときに研究(けんきゅう)したことや、()きだったことが、今の自分を(すく)ってくれていると(かん)じます。当時のことを()(かえ)って「あのとき楽しかったな~」と思えたりもするので、今のうちに自分の()きなものをとことん()()めてほしいなと思います。

都甲 潔先生 インタビュー

工学博士
中村学園大学大学院 栄養科学研究科 特任教授
フード&ヘルスイノベーションセンター フードテック部門 部門長
九州大学 高等研究院 特別主幹教授
五感応用デバイス研究開発センター アドバイザー

とこう・きよし都甲 潔先生

九州大学工学部電子工学科、同大学院博士課程を修了。自身の著書「プリンに醤油でウニになる」が話題に。食べ物の「味」を測定する装置「味覚センサー」を開発して世界中を驚かせた。2013年には、学術・芸術上の発明・発見の業績がある人に授与される紫綬褒章ほか、受賞多数。

都甲先生の自由研究 ビスコのおいしさの秘密をひもとく

  • どんな研究?

    官能(かんのう)検査(けんさ)使(つか)って、ビスコのおいしさにせまる!※官能(かんのう)検査(けんさ)とは:(はな)でかいだり、口で(あじ)わったりと人間の五感(ごかん)視覚(しかく)聴覚(ちょうかく)触覚(しょっかく)かくきゅうかく)を使(つか)って「(あじ)わい」を調(しら)べる検査(けんさ)のこと

  • この研究テーマを選んだ理由

    90年以上(いじょう)前から販売(はんばい)されているビスコ。長い間(あい)され(つづ)けているには理由(りゆう)があると思ったから。

研究成果

ビスケットから感じたちょっとの塩味と苦味がクリームの甘味を増やし、ビスコ全体の味がレベルアップしている!

ビスコが想像(そうぞう)以上(いじょう)複雑(ふくざつ)(あじ)をしていて(おどろ)きました。たとえば「スイカに(しお)をかけて食べると甘味(かんみ)()す」のように、ちょっとの塩味(えんみ)苦味(にがみ)甘味(かんみ)()やすことがあります。ビスコも同じように、ビスケットの塩味(えんみ)苦味(にがみ)がクリームの甘味(かんみ)()やしていることがわかりました。このほかにも、どのくらいの(しお)(りょう)なら甘味(かんみ)()えるのか調(しら)べてみるのも面白(おもしろ)そうです。

使った道具
  • ビスコ
  • ティースプーン
  • A4用紙
  • バターナイフ
  • ざら2~3まい
  • 筆記用具ひっきようぐ

研究のステップ

1

ビスコを2つに()り、バターナイフを使(つか)ってビスケットとクリームに分ける

ポイント
  • 官能(かんのう)検査(けんさ)の前に(あじ)()いものを食べるのはNG!口の中はいつも通りの状態(じょうたい)にしておこう
ポイント
  • 官能(かんのう)検査(けんさ)の前に(あじ)()いものを食べるのはNG!口の中はいつも通りの状態(じょうたい)にしておこう
2

クリームを(あじ)わい、(かん)じたことをメモする

ポイント
  • いろんな(あじ)(かん)じるために、まずは半分の(りょう)(ため)してみよう
  • (あじ)わうときは(した)の上にのせた食べものを上あごに()しつけるようにすると(あじ)(かん)じやすいよ
ポイント
  • いろんな(あじ)(かん)じるために、まずは半分の(りょう)(ため)してみよう
  • (あじ)わうときは(した)の上にのせた食べものを上あごに()しつけるようにすると(あじ)(かん)じやすいよ
3

ビスケットを(あじ)わい、(かん)じたことをメモする

ポイント
  • 時間がたつと(わす)れてしまうので、そのとき(かん)じたことすべてをくわしく書こう
ポイント
  • 時間がたつと(わす)れてしまうので、そのとき(かん)じたことすべてをくわしく書こう
4

ビスケットとクリームを一緒(いっしょ)(あじ)わい、(かん)じたことをメモする

5

3つの検査(けんさ)結果(けっか)をもとに、ビスコのおいしさの秘密(ひみつ)を考える。先生は「ビスケットから(かん)じたちょっとの塩味(えんみ)苦味(にがみ)がクリームの甘味(かんみ)()やし、ビスコ全体(ぜんたい)(あじ)がレベルアップしている!」という秘密(ひみつ)にたどりついたよ。

ポイント
  • どんな実験(じっけん)も1回ではうまくいかないもの。まずは(ため)して、思い通りの結果(けっか)がでるまでトライしてみよう
ポイント
  • どんな実験(じっけん)も1回ではうまくいかないもの。まずは(ため)して、思い通りの結果(けっか)がでるまでトライしてみよう
発展のヒント大人と子どもでは、味の感じ方が違う。いろんな味のビスコを使って、家族で官能検査をしてみよう。どんな結果が出たのかをお互いに照らし合わせてみると面白いよ。

都甲(とこう)先生は、普段(ふだん)研究(けんきゅう)テーマをどのように()めていますか?

いまの自分の研究(けんきゅう)テーマをさらに(ふか)めるかどうか、考えながら()めています。

まずは、自分がいま()り組んでいる研究(けんきゅう)についてしつこく考えます。そして、そのテーマについてもっと研究(けんきゅう)(ふか)めるべきかどうかを見極(みきわ)めて、年1~2回はテーマを組み直しています。その見極(みきわ)めはこれまでの経験(けいけん)(かん)。あと、自分が教えている学生の(しあわ)せも重視(じゅうし)していますね。学生たちが「こんな研究(けんきゅう)をしているんだ」と(まわ)りの人に言いたくなるような研究(けんきゅう)テーマを一緒(いっしょ)に考えたいなと思っています。

味覚(みかく)研究(けんきゅう)する都甲(とこう)先生が、
普段(ふだん)の生活で美味(おい)しいと(かん)じるものはなんですか?

(たまご)使(つか)った食べものには甘味(かんみ)とうま()があって()きです。

個人的(こじんてき)には(たまご)をつかった食べものが()きで、面白(おもしろ)いと(かん)じます。(たまご)ってたんぱく(しつ)のかたまりですよね。(あじ)でいうと甘味(かんみ)とうま()があり、これらは赤ちゃんが(この)(あじ)。つまり、人間が生きものとして非常(ひじょう)(この)(あじ)なんですよ。

都甲(とこう)先生は味覚(みかく)センサーという「(あじ)をはかれる機械(きかい)」をつくられました。
それでもなお、人の感覚(かんかく)使(つか)った官能(かんのう)検査(けんさ)必要(ひつよう)とされている理由(りゆう)はなんですか?

実際(じっさい)にその食べものを食べるのは機械(きかい)ではなく、人間だからです。

企業(きぎょう)が新しい(あじ)をつくるときは、(あじ)微妙(びみょう)(ちが)試作(しさく)(ひん)をたくさんつくります。それを一つずつ人間がチェックしていたら大変(たいへん)なので、味覚(みかく)センサーで試作(しさく)(ひん)の中から「目指(めざ)(あじ)」により近いものを(えら)んだあと、人間が官能(かんのう)検査(けんさ)をして一番よいものを(えら)びます。味覚(みかく)世界(せかい)は、機械(きかい)と人間が協力(きょうりょく)しあっている世界(せかい)なんです。

大人になると苦味(にがみ)()きになると聞きますが、
大人と子どもで(あじ)(かん)(かた)(ちが)いはありますか?

大人と子どもでは大きな(ちが)いがあります。

子どもが苦味(にがみ)敏感(びんかん)なのは「苦味(にがみ)(どく)」と本能的(ほんのうてき)認識(にんしき)しているからですが、一方で大人になるとビールなどの(にが)いものを(この)むようになりますよね。それは(した)感度(かんど)とは(べつ)に、これまでの経験(けいけん)知識(ちしき)から(のう)が「苦味(にがみ)(どく)」という認識(にんしき)をしなくなるからです。そういうわけで、大人になると苦味(にがみ)(かん)じにくくなり、(にが)いものも食べられるようになるんですね。

官能(かんのう)検査(けんさ)をしていて、
いままでで一番複雑(ふくざつ)(あじ)だと(かん)じたものはなんですか?

今回実験(じっけん)したビスコです。クリームとビスケットの(あじ)の組み合わせが複雑(ふくざつ)でした。

ビスコはビスケットとクリームのサンドイッチ構造(こうぞう)ですよね。(あま)いクリームに、ビスケットのほんのわずかに(かん)じる塩味(えんみ)苦味(にがみ)(くわ)わり、一緒(いっしょ)に食べることで人はおいしいと(かん)じます。そういった(あじ)の組み合わせが複雑(ふくざつ)面白(おもしろ)いなと思いました。

人によって(あじ)(かん)(かた)(ちが)うのはなぜですか?

時間の(かん)(かた)と同じように、(あじ)(かん)(かた)も人によって(ちが)います。

たとえば(わたし)授業(じゅぎょう)をしたとして、(わたし)の話を面白(おもしろ)いと(かん)じる生徒(せいと)もいれば、退屈(たいくつ)面白(おもしろ)くない、時間がたつのが(おそ)いと(かん)じる生徒(せいと)もいるでしょう。その2人のあいだでは時間の(かん)(かた)(ちが)います。それと同じように、人によって(あじ)(かん)(かた)(ちが)うだけです。

自由(じゆう)研究(けんきゅう)()り組む子どもたちにメッセージをお(ねが)いします

目の前のことに()り組んでいれば、自分の()きなこともいつか見つかります。

最近(さいきん)「やりたいことが見つからない」という声をよく聞きますが、()の中の99.99999%の人は、(わか)いうちにやりたいことなんて見つけていません。ですから、目の前にあることに、いまであれば自由(じゆう)研究(けんきゅう)()り組んで、一歩一歩を()(かさ)ねていってください。そうすれば、自然(しぜん)と自分の()きなことがわかってきます。あと、()きなことを見つけるのはいつでも大丈夫(だいじょうぶ)です。()きなことを見つけたときに、強い意志(いし)とそれを実行(じっこう)する勇気(ゆうき)()ったらいいんですよ。

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