おなかの中では何が起こってる?食べ物が通る消化器官の役割、お通じが出る仕組みとは
自分の身体なのに、その中で何が起こっているのかはなかなかわからないものですよね。今回は、食べ物が通るおなかの消化器官とその役割、お通じが出る仕組みについて、順天堂大学医学部の解剖学教授・坂井建雄先生に教えてもらいました。おなかの中の仕組みを知れば、お通じをよくするヒントが見つかるはず!
食べ物を口に入れた後、おなかの中ではどんなことが起きているの?
口から入った食べ物は、まず胃へ送られます。坂井先生の話によると、胃は「食べ物を一時的に貯めておく器官」なのだそう。
「食べ物の本格的な消化・吸収は小腸で行われますが、その処理速度に限界があるため、胃に貯めておく必要があるのです」(坂井先生)
胃の中の食べ物は、胃液に含まれる胃酸とペプシン(タンパク質を分解する酵素)によって消毒・殺菌されます。その次に、胃から小腸へ移動する途中で通るのが十二指腸です。
「十二指腸では、肝臓で作られた胆汁と、膵臓で作られた膵液が食べ物の消化を助けます。十二指腸が分泌する粘液と膵液はアルカリ性で、胃酸を中和する働きもあります」(坂井先生)
ちなみに肝臓は、胆汁を作るほかにも消化に大切な役割を果たしているのだそう。
「肝臓のいちばん重要な働きは、栄養素を集中的に代謝することです。たとえば、ブドウ糖をグリコーゲンに変えて血糖値を安定させたり、アルブミンやグロブリンといった血液中のタンパク質を作ったりします」(坂井先生)
小腸へ送られた食べ物は、小腸の消化液によって消化され、体内へ吸収されます。
「小腸は、消化・吸収をするために、粘膜の表面積がとても広くなっています。長さは約6メートルで、その表面にはひだがあり、細かい突起がたくさん生えています。小腸の粘膜を広げると、その表面積は約120平方メートルにもなるのです」(坂井先生)
お通じが排泄される仕組みとは?お通じの滞りに役立つものとは...
食べ物が最後に送られる大腸は、栄養素が吸収された食べものの残りカスから水分を取り除き、固まった排泄物を作る器官になっています。
「大腸には腸内細菌がたくさんいて、食べ物の残りカスに含まれるさまざまな成分を分解します。例えば、排泄物が茶色になるのは、腸内細菌が残りカスに含まれる胆汁色素に作用する働きによるもの。また、大腸の働きが不十分で残りカスに大量の水分が残ると、排泄物がゆるくなってしまいます」(坂井先生)
そして、大腸に溜まった排泄物が肛門から排出されるのがお通じです。
「健康な人の場合、食べ物の残りカスが大腸の最後の部分(直腸)まで送り込まれて、ある程度の量が溜まると、直腸の壁が引き伸ばされて便意を感じ、自律神経の働きでお通じが起こります」(坂井先生)
しかし、きちんとお通じが起きるのは、脳がOKサインを出したときだけ。お通じが滞っているときは、これらの器官が不具合を起こし、脳が正常に判断できないような状態になってしまっているのです。
「お通じが滞る原因としては、①大腸の運動が弱い②肛門の括約筋が緊張している、などといったことが挙げられます。排泄物が長く留まると、水分が過度に吸収されて固くなり、ますます排便しにくくなるという悪循環が生まれることもあります」(坂井先生)
お通じが滞ってしまうのは困りものですが...そんな時にサポートをしてくれるのが『善玉菌』の働きです。
乳酸菌やビフィズス菌は、この善玉菌に分類されます。乳酸菌のつくる乳酸、ビフィズス菌のつくる乳酸と酢酸が大腸の腸管を刺激すると、腸管から水分が分泌されて便をやわらかくし、大腸の運動が活発になるのです。
「大腸への刺激のほか、善玉菌による乳酸や酢酸が腸の中を酸性にすることで、有害物質を作る細菌を抑えて、腸内環境を健康に整えてくれます。また、ビフィズス菌には整腸作用だけではなく、葉酸などのビタミンB群を作り、栄養素の吸収を助けてくれる働きもありますよ」(坂井先生)
いかがでしたか?ひとくちに消化器官といっても、それぞれいろんな働きをしているのですね。おなかの調子が気になるときは、器官ごとの働きを把握したうえで、解決方法を探ってみましょう!
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