"座りっぱなし"は健康トラブルに!オフィスでもできる簡単運動
「なんとなく疲れが取れない」「肌が荒れやすくなった」など、原因不明な健康・美容上の悩みを抱えていませんか? もしかしたら"長時間のデスクワーク"のせいかもしれません。実は、長時間座りっぱなしでいることは、体に思わぬ悪影響を与えているのです。
NPO法人予防医療推進協会で理事長を務められている佐々木さゆりさんに、"座りっぱなし"の弊害を改善する、簡単な方法についてお聞きしました。
デスクワークは危険!? 座りっぱなしが引き起こす健康トラブル
オーストラリア・シドニー大学での22万2000人以上に及ぶ調査結果によると、座っている時間が1日11時間を超えると、死亡リスクが40パーセント以上にもなるのだそう。なんと、この死亡率は喫煙以上! 座りっぱなしでいることで、血行不良や筋肉のこりなど、小さな体の不調が積み重なってしまうのです。
「いつ、どんな自覚症状が出るかには個人差がありますが、早い人だとその職に就いて1ヵ月くらいで『なんだか最近肩こりが...』などと、軽い症状を感じはじめます。仕事がとても忙しく、長時間デスクワークをしている人ほど意識が仕事にしか向いていないため、仕事にならないほどのひどい頭痛など、大きな症状が出るまで、体の不調に気付かないということもあります」(佐々木さん)
特に、脳いっ血や脳梗塞などの命に関わる病気のリスクが高まってしまうのが、座りっぱなしの恐ろしいところ。全身の血流が悪くなることで、体のさまざまなところに影響が出てしまうんだそう。
口臭や顔のたるみまで! 本当は怖い"猫背"の弊害
長時間デスクワークをしていると、どうしても背中が丸まって"猫背"になってしまうという人も多いはず。
見た目にも美しくないため、できるだけ避けたい猫背。実は、猫背がクセになってしまうと、さまざまな弊害が起こるのです。
「背中が丸まってしまうクセがつくと、肺が圧迫されて十分な酸素が取り込めなくなります。顎が前に突き出されるような姿勢になるため、口が開きやすくなるんです。それにより、口の中が乾いて、口臭の原因になることが多いですね。酸素が十分に取り込めないことで代謝が落ちていまい、口の中の乾燥によって細菌やウイルスに感染しやすくなるというデメリットもあります。また、胃腸が圧迫されて便秘がちになり、肌荒れを引き起こしてしまうことがあります。『腸美人は肌美人』とも言われるように、腸内環境と肌は、とても密接に関わっているんです」(佐々木さん)
さらに、猫背になると胸の筋肉が緩むため、バストも垂れやすくなってしまうんだとか。
「そこから顔の皮膚も下に引っ張られてしまい、顔のたるみにもつながりかねません。『たかが猫背、されど猫背』ですよ」(佐々木さん)
オフィスで簡単にできる!健康ストレッチ運動
では、座りっぱなしと猫背を予防するには、どうすればよいのでしょうか。
佐々木さんに、オフィスで簡単にできるストレッチ方法を教えていただきました。
① 背中で両手を組み、胸筋を大きく広げるイメージで組んだ手を上に引き上げ5秒キープ。これを3回繰り返します。
出典:日本実業出版社『座りっぱなしがあなたの健康を蝕む 本当は怖いデスクワーク』
② 次に、両手でシャツの肩口にある縫い目部分をつまみ、肩甲骨が動いているのを意識しながら肘をゆっくり後ろに10回回します。
出典:日本実業出版社『座りっぱなしがあなたの健康を蝕む 本当は怖いデスクワーク』
座ったままでもできるので、仕事中に「背中が丸まっているな」と思ったら、試してみてはいかがでしょうか。
ストレッチをするときは、そのとき動かしている筋肉に意識を向けるようにすると、効果が高まるんだそうです。
健康・美容のための"理想のデスクワーク"って?
シドニー大学での研究では、上記のようなトラブルを回避するためには、座りっぱなしの時間を1日4時間未満に抑えるのがもっとも効果的だという結果が。
とはいえ、デスクワーカーにとって、1日4時間しか座らずにいるというのは、あまり現実的ではありませんよね。
佐々木さんによれば、長時間のデスクワークが避けられない場合は、最低でも1時間に1回程度、トイレやお茶くみなどで席を立ったりするだけでも、"座りっぱなし"の悪影響を軽減することができるんだそうです。
デスクワークをしている方は、そうでない方に比べて運動量が圧倒的に足りていません。
「とにかく、1分刻みでもいいので、こまめに動くことが大切です。欲を言えば、トイレに行くときはあえて階段を上って一つ上の階のトイレに行く、いつもより15分早く起きて一駅歩く、といった運動ができるといいですね。『15分も早く起きられない!』という方に限って、寝る前にスマホをいじったりして、無駄に夜更かしをしていることも多いんです。今ベッドでこの記事を読んでいる方は、読み終えたらすぐに寝て、明日は一駅歩いてみてくださいね!(笑)」(佐々木さん)
また、デスクワーク中は、太ももの裏が椅子で圧迫されてしまい、下半身の血流が悪くなる恐れがあります。そのため、足の裏が床にぴったりつくように、いすの高さを調整すると、リスク回避の効果が高まるそうです。
小柄な方は、足元に小さな足置きなどを置いて、太ももの裏が圧迫されないように工夫するのもおすすめです。
デスクワークの意外な弊害は、こまめな運動を習慣づけることで回避できます。
「ただし、『猫背になるのが怖いから、きちんと運動しなくちゃ』と、義務感に駆られるよりも、『もっと健康できれいになるために、少し歩いてみようかな』と、前向きな気持ちで取り組んだほうが、効果は格段にアップします」と、佐々木さん。
体の不調が気になったら、オフィスでの過ごし方を振り返ってみるといいかもしれませんね。
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