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筋肉量増加・維持とGABA成分

株式会社ファーマフーズ 機能性表示推進室室長
開発部次長 博士(農学) 山下 裕輔

PROFILE

香川県出身。広島大学生物生産学部 大学院生物圏科学研究科 卒業。大学院では鶏、卵および抗体の研究を行っており、卵由来の機能性素材の開発も手がける株式会社ファーマフーズに入社。入社後は研究開発や営業を経験し、現在は機能性表示推進室室長と開発部次長を兼務。

GABA成分の原材料メーカー・ファーマフーズ

ファーマフーズは、GABA成分をはじめとするさまざまな機能性素材を研究開発・製造するメーカーです。製造された機能性素材は食品メーカーや製薬会社などに提供されており、GABA成分では国内トップのシェアを誇っています。

私の所属する開発部では、当社の主力製品であるGABA成分について、すでに確認されている「ストレスの低減」「睡眠の質の向上」「血圧低下」以外の、さらなる機能を求めて日々研究をしております。そのなかで、今回はGABA成分に「筋肉量の維持」機能のエビデンスが確認されましたのでご報告いたします。

GABA成分で健康寿命の延伸をサポート

加齢に伴って減少してしまう筋肉量。筋肉量の減少が原因となって、身体機能が低下した状態をサルコペニア(加齢性筋肉減弱現象)と呼びます。日本人の75歳以上の4人に1人はサルコペニアであるという統計があり、サルコペニアになると、歩くことが億劫になったり、転びやすくなったりします。そして、結果的に死亡・要介護リスクは約2倍になるとされています。

健康寿命延伸には筋肉量の維持が重要

加齢に伴う下肢筋肉量の変化

50歳を超えると男女ともに下肢筋肉量が減少、男性ではとりわけ顕著に減少

老年医学.2010;47:52-57.
J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2020;Nov 25.

そのため一般的に「健康寿命の延伸には、筋肉量の維持が重要である」といわれています。

まだあまり知られてはいませんが、GABA成分には、成長ホルモンの分泌を促進し、たんぱく質の合成を促進する作用(実験で報告済み)があります。たんぱく質は筋肉の発達に欠かせない要素であることから、GABA成分を摂取することで、筋肉量の増加や維持に役立てられないかと考え実験を行うことにしました。

まず行ったのは、筋肉量増加の効果が確認されているホエイプロテインとGABA成分を一緒に摂取することで、より一層筋肉量を増加させられるのではないかという仮説を検証する臨床試験です。

実験① 
ホエイプロテイン+GABA成分の摂取で、筋肉量の効果的な増加は可能か

《実験方法》

健常な男性(26~48歳)で、ホエイプロテイン10gを摂取するグループと、ホエイプロテイン10g+GABA成分100mgを摂取するグループをつくり、12週間にわたって週2回(60分/1回)の筋肉トレーニングを実施。トレーニングのある日はトレーニング後に、トレーニングのない日は就寝前に毎日摂取し、筋肉量の変化を比較。
※トレーニングがない日の摂取時間帯を就寝前に設定したのは、GABA成分が睡眠の質の向上に効果があること、成長ホルモンは良質な睡眠中に分泌されることなどの理由による。

全身の非脂肪量(≒筋肉量)の変化

ホエイプロテイン+GABA成分摂取で全身の非脂肪量(≒筋肉量)が増加

M.Sakashita et.al. J Clin Med Res. 2019;11(6):428-434

GABA成分摂取により
全身の非脂肪量(≒筋肉量)が有意に増加

その結果、ホエイプロテインだけを摂取したグループ(上図のWP)に比べて、ホエイプロテイン+GABA成分を摂取したグループ(上図のWP+G)では、平均約1000gの筋肉が多く増加した。

つまり、ホエイプロテインとGABA成分を組み合わせて摂取しながら適度な筋肉トレーニングをすることで、多量のプロテイン摂取や過度な筋肉トレーニングをすることなく、筋肉量を効果的に増加できることが分かった。

また、当社が行った実験ではありませんが、加齢に伴って筋肉量が減少しがちな中高年の女性の筋肉量維持に、GABA成分が貢献できるかを調べたデータも報告されています。

実験② 
GABA成分の摂取+普段の生活で
筋肉量は維持可能か

《実験方法》

健常な女性(53~63歳)で、プラセボを摂取するグループとGABA成分54.5mgを摂取するグループをつくり、8週間摂取。運動負荷は日常の身体活動のみ。

全身の非脂肪量(≒筋肉量)の変化

GABA成分の摂取+普段の生活で全身の非脂肪量(≒筋肉量)維持が可能

出典:Algae 2016, 31(2): 175-187

GABA成分摂取で筋肉量が増加(維持)

この実験でも、プラセボを摂取したグループでは、8週間で平均331gの筋肉量が減少したのに対し、GABA成分を摂取したグループでは平均1014gの筋肉量の増加が確認された。

GABA成分の筋肉量増加のメカニズム

これらの実験から、GABA成分には、筋肉量の増加や維持に作用する機能があることが明らかになりました。
ここであらためて、GABA成分が筋肉量を増加させるメカニズムについてご紹介しましょう。

GABAの筋肉量増加・維持
メカニズム

GABAの筋肉量維持(増大)メカニズム

Algae,2016;31(2):175-187
Age Ageing,2010;39,412-423

Clinica Chimica Acta,2006;364,77-81
Acta Endoctinol,1980;93,149-154
脳神経外科ジャーナル,1997;6,147-154

  • ①経口摂取したGABA成分は腸から吸収され、血中へ移行します。そして、脳下垂体を刺激し、成長ホルモン(GH)の分泌を促進します。

    ※脳には、有害物質をはじめとするさまざまな物質が簡単に脳内に侵入しないようブロックするバリア機能(これを、血液脳関門と呼びま す)があります。しかし、脳下垂体は脳内にありながらも血液脳関門が存在しないためGABA成分が入り込み、効果を発揮することができ るとされています。

  • ②成長ホルモン(GH)は、肝臓に取り込まれて、肝臓でインシュリン様成長因子1(IGF-1)がつくられ分泌 されます。
  • ③インシュリン様成長因子1(IGF-1)は、血流に乗って筋肉へと移行します。
  • ④インシュリン様成長因子1(IGF-1)が、筋たんぱく合成促進、筋細胞のアミノ酸取り込み促進、神経筋繊 維を保護し、筋肉量を維持・増加します。

筋肉の増加には、たんぱく質などの適切な栄養、睡眠、そして運動が重要な要素となります。GABA成分は、アミノ酸の一種で筋肉の栄養となり、また、睡眠の質を改善する効果も知られています。
そして、これはまだ研究段階ですが持久力の向上にも効果がありそうだということが分かってきました。さらにGABA成分自体もたんぱく質の合成を促進し、筋肉の増加に直接力を発揮します。つまりGABA成分は、あらゆる角度から筋肉の増加をサポートしているのです。

実は、人間の体には、ありとあらゆるところにGABA成分の受容体が存在しています。体のさまざまな部位の受容体にGABA成分がくっつくことで、まだ明らかになっていない多様な機能があるのではないかと推察されます。高いポテンシャルを秘めたGABA成分。私たちはこれからもGABA成分をはじめとする機能性素材の研究推進を通じて、みなさまの健康維持と生活の質の向上に貢献してまいりたいと思います。